俺は中学、高校の頃、テニス部であった。
中学は軟式、高校は硬式と柔らかいボールも硬いボールもラケットで自在に操る事のできるテニサーになった。

高校の時、俺の学年は25人、総勢50人近くの部員が所属していた。俺はその中からレギュラーになり、3年間をテニサーのテニサーによるテニサーらしいテニスをしていた。

しかし、その反面、3年間どん底でも負けずに頑張ってきた奴も当然いるわけだ。
元からの運動神経や体力、自分の体ではないラケット。
それらが左右する事も大きい。しかし、俺はこのレギュラーになれなかったが、3年間、部員で在り続けた「シゲシゲ」について語りたいと思う。


まずは簡単にシゲシゲを紹介したい。

シゲシゲは元々地黒の肌をもち、黒ぶち目がねをかけている、いわゆる研究員みたいな奴である。しかも普通の理科室とかで研究してそうな奴である。水道の勢いが強くて「おおっ!」とかびびってそうな奴である。

性格は明るく、確実ないじられキャラである。

髪型は画用紙を切るぐらいの気持ちで切られた髪形であり、テニス中の服装はテニスの服よりも学校のえげつない赤紫色の体操服こよなく愛し、着こなす奴である。

基本的に運動ができず、ソフトボール投げは16Mとかいう常に肩を脱臼してるぐらいのレベルであった。

加えて、間接がすんなり動いてくれないような感じである。
接戦でロボットに惜敗するぐらいの間接の動きだ。









そんなある日、我が高校と他校の練習試合が行われる事があった。
普段はレギュラーとサブと別れて違うレベルのあった違う高校に行ったりする事が多かったが、この時は合同であった。



集合駅に朝の7時半。



大勢が私服やテニスの服で来るなか、体操服信者は上下赤紫で登場した。

もはやセンスの欠片を見つけるのは不可能であった。

ズボンの裾が短すぎ、真っ白な長い靴下がより一層悲劇度を増しているかのようであった。




電車に乗っている時に、つり革の持つ所の上にある隙間に手を片方ずついれられ、操り人形のようにぐったりしているシゲシゲを見て、俺は昨晩から考えていた計画を実行しようと思った。




それも「シゲシゲ改造計画」である。





目的の駅に着いた時、俺と助手として雇ったもう一人の友達、そしてシゲシゲを残し、先に行ってくれと他の部員には言い、その実行は開始された。





S「おい、シゲシゲ!お前、なめられすぎや!」

シ「え〜、僕そんな事ないってぇ〜」

O「まずその「僕」とかがアカンねん」

S「そうやな、それ、まず直そう。あと、あれや。髪型やわ」

シ「僕、髪型とか分からんもん」

O「ジェル持って来たったから、とりあえずセットしたるわ」





・・・・・





S「おお!エエ感じにできた!」

O「これはエエわ!後はなんやろな」

S「振る舞いやろ。歩き方とか、後、ラケットの持ち方やって。そんなショルダーバックみたいに背負っとーからダサいねん」

シ「そうかなぁ〜」

O「そうやな、これ、こうやったら、、ほら!エエやん!」

S「おう、よーなった。後、あれや。お前、チェンジコートの時、何か水筒出してお茶とか飲んどーやろ?小2の遠足やん、そんなん。これ、買っといたから、これ飲め」

O「もう、エエやろ?完璧やろ?俺もこんな奴と試合あたったら嫌やもん!」

シ「改善された?」

S・O「されまくったわ、ほな、いこか」





シゲシゲ改造計画を終えた、俺らは待っている部員の所に行った。
そこには勿論、顧問を筆頭に他の高校の奴らがずらりと居た。

脅しておくには絶好の場であった。






そして






A「お、あいつら来たやん」

B「あれ?何かめっちゃガニ股で歩いてるやん・・・」

C「あれ、シゲシゲやろ!?ごっつ腰落として歩いてくるやん!!絶対しんどいだけやん!!」

A「サングラスしてる!!真っ黒のサングラスや!でも、何か小宮山みたいやん!!」

B「うわっ、ラケット肩に担いでるやん!!しかもカバーから出して担いでるやん!!」

A「カバーは普通に手持ちやん、意味分からんがな」

C「頭、ケンザンみたいになっとーで。ごっつ頭長いで、あいつ。カチンカチンっぽいし・・・」



A「あ、シゲシゲやん・・・変わったな・・・」

シ「おいどんに何か様か?」

B「おいどんて!!何時代の人やねん、お前!」

シ「おいどんに触った奴、許さないからね」

S「シゲシゲ、ちょっと語尾かわいなってるって!訂正しとけ!!」

シ「ぁ、おいどんに触った奴、許さん・・許さん、どん?」

O「どんではないやろ!?それは名前だけでエエねん!」

A「てか、もう始まるから、しかもシゲシゲの試合1試合目やから」

S「もうアップは完了しとーで、シゲシゲは。エエ汗かいとうから大丈夫や」









そしてシゲシゲの第一試合が始まった。





B「あっさり、シゲシゲ1ゲーム目とられたな・・・」

S「あほか!わざととらせたんや、シゲシゲは!見とけ!このチェンジコート中の休憩時間が今後の行方を左右すんねん!!」

A「どーゆー事やねん・・・休憩時間に試合、左右て・・・」

O「見てみろや、シゲシゲの飲んでるもん」

A「ん?」







B「ヤクルトやん!!しかも5本入りの可愛らしいやつんけ!!」

A「あんなもん飲んでるテニスプレイヤー見たことないし!!綺麗にビニール剥がして飲んでるやん!ださっ!!」

B「すぐなくなったっ!ちっさっ!!もう4本飲んでもたやん、シゲシゲ!!まだ1ゲーム終わった所やのに!」

S「アカン、誤算やわ。シゲシゲ5分の4ヤクルト飲んでもた。もうこの試合はアカンわ」





シゲシゲはこの1ゲーム目でヤクルトを4本飲んだが、何故か試合が終わっても1本残っているという分配能力の無さを露呈した。

試合の結果はヤクルトのおかげで逆転勝利をおさめたのであった。

            TYPE S

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