俺の中学の時の友達にTという奴が居た。
Tは内気で女の子と接する事が苦手であった。
外見はそこそこカッコよく、中身も男の前ではオチャラケたりするおもしろい奴ではあった。



そんなTも青春を駆け抜ける『恋』をしていた。


女の子は可愛い子で、学年でも名の通っていた子であった。


俺と友人1人は心からTの恋が実る事を祈っていた。

いい奴にはいい恋をしてほしい。

内気な心をひらける彼女を作ってほしいと願っていた。







そして、坊主もせわしなく走っている師走。

ホンマに坊主も走っているのか、寺の息子である友達に聞いてみたら、「今、TVを見てる」と言われ少し寂しくなった師走。

坊主はあんまり走っていないという事実だけを噛み締めていた、そんなある日、俺と友人はTと話をしていた。



どうやらTは告白を考えているのだという。

ついにだ。

ついにTは大人の第一歩を踏み出そうとしていたのだ。

しかし、初めての告白。
Tは面と向かって言う事はできないと言った。

そこで切れ者Sは、Tに一つの提案をしてみた。






「年賀状で告白」である。







なんともロマンチックではないか。
新しい年の初め。
多くの年賀状の中に一枚、普通なら届かないような人からの年賀状。
そこには、本人だけが知っていた胸の高鳴りや、彼女に対する熱い気持ちが書かれている。
普段読んだら何気ない文章かもしれない。

しかし、そこは正月の力。
御節とお雑煮も後押しし、栗きんとんの一押しで彼女も目が覚めるかもしれない。


男はロマンチストなのだ。
そんなもの、ありがた迷惑だ。ロマンチックでもなんでもない。という女性が居るかもしれないが構わない。







その提案は見事、Tに受諾された。







そして年明け。







Tは言ったとおり思いを綴った年賀状を彼女へと送ったという。







しかし、後々明らかになる恐怖の事実をまだこの時、知る由も無かった。













































「変人宣言!!

僕はあなたの変人になって、

この先もずっと一緒にいる事を誓いたいと思います!」
 









Tの初めての告白は本当の恋を体験した事のないのはもちろん、まさか漢字まで知らないという失態により幕を閉じた。








年明けから変人宣言されたのでは、彼女もたまったもんじゃなかったのだろう。





            TYPE S

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