昔、昔の事じゃった。
おじいさんが山にシバカレに、おばあさんが川でのんびりと株の売買をやっていた時、大きな木の箱がゴロンゴロン川の上から転がってきた。
何かと不思議に思ったおばあさんが箱を止めて蓋を開けてみると、そこにはなんと山に行ったはずのおじいさんが入っていた。
この歳になってもイジメられている事は確実必至であった。
おばあさんは涙目になりながらも、株が急上昇してきたため、急いで箱の蓋を閉め、また川に流し返しました。

しばらくすると、今度は大きな桃がドンブラコドンブラコと流れてきました。おばあさんはそのドンブラコドンブラコという効果音に少しムッとしつつも、89歳の押さえきれない好奇心は相当なものなのでしょうか、左手だけで抱え上げ家路へと向かいました。

家に帰るとビショビショのおじいさんが自分のパンツを干していました。
「濡れちゃったとよ」
とおじいさんが寂しそうな目で見つめるのを全く気にしないおばあさんは桃にゾッコンラブでした。

「濡れちゃったとよ」
おじいさんが2度目の「濡れちゃったとよ」発言をした時、おばあさんは桃に「危険物」と書いた張り紙を目にしました。
よく見ると「危険物(人類)」と書かれていました。
なぜか(人間)ではありませんでした。

子供のいなかったおじいさんとおばあさんは嬉しくてたまりませんでした。
おじいさんは桃から出てくるだろうこの子を「桃太」と名づけようと決めました。濡れてるくせに決めました。

おばあさんが慣れた様に日本刀で桃を真っ二つにすると中からは何と、今の日本刀で額に軽い切り傷を作ってしまった少年が出てきました。

「どもっす!俺、貫太郎っていいます!」

おじいさんの儚い夢はもろくも消えていきました。





長い年月を経て、貫太郎はもう今年で45になろうとしていますが、未だに鬼退治に行くような素振りはみせていないそうです。

           TYPE S

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